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■滅多にないことですが、ピストンタイプの場合内部に水分、特に海水が浸入してしまっている状態で長い間放置しておくと、ピストンOリングがボディ側にくっついて離れなくなることが稀にあります。
久しぶりのダイビングでこの状態のままタンクに接続して一気に高圧を流し込むと高圧で無理やりピストンが動こうとしてくっついていたOリングがボディから剥がれOlリングというゴムにダメージを負いそこからエアー漏れ、フリーフローとなることがあります。
また、高圧を流し込んでも剥がれないほど協力にくっついていた場合、ひたすらフリーフローしっぱなしになり止められなくなります。
しかしそれらはまだダイビング前に認知できる事ですから対応は出来ますが、中途半端にOリングがくっついて、ピストンの動きが非常にギクシャクしていた場合、運悪くダイビング中に突如ピストンが引っかかって動かなくなる事も考えられます。
ピストンが引っかかった位置でトラブルの症状は変化しますが、ピストンが開いている状態で引っかかった場合水中ではエアーが出っ放しでフリーフローが止まらなくなります。
しかしピストンが高圧シートに当たって閉じた時点で引っかかったとしたら今度は完全なエアストップとなります。
当然両方とも1stステージのトラブルですから、オクトパスに咥え直しても結果は同じことです。
そのような場合が一番最悪な状態となります。

■ダイアフラムタイプの場合は、基本的に水分が内部に入りにくくなっている構造ですが、やはり使い方保管のしかたで水分が浸入する場合があります。
その場合はやはりピストンタイプと同じように、高圧シートと高圧ポペットがくっついたまま離れないか、逆に高圧ポペットが固まって動かなくなりエアーストップになるかなどのトラブルが発生することが考えられます。
また、ダイアフラムが劣化してヒビが入り、そこからエアー漏れすることもあります。

※やはり安全と快適性をご自身が確保する為にも定期的なメンテナンスとオーバーホールは受けて頂く事をお勧めいたします。

【考えられるトラブル】

ちょっと見づらいですが、ピストン先端下側にあいてる小さな穴からエアーが通り抜けます

高圧シートがピストン先端に当たっている状態です。これでエアーが止まる状態です

スタンダードピストン

高圧シートはピストン先端側についてます

バランスドピストン

先端にあいてる穴から空洞になっているピストン内部をエアーが通ります

高圧シート(下側)と高圧ホペット(上側)の画像

Eサブ
スプリング

Bダイアフラムディスク

スプリングディスク

C高圧シート/高圧ポペット

高圧

バランス
チャンバー

Aメインスプリング

ボディ

D減圧された中圧エアー/中圧ポート

@ダイアフラム

エアーフィルター

[ダイアフラムタイプ]
さて、もう一方のタイプであるダイアフラムタイプとは、ウォーターポートより海水を取り込んで中圧値の手助けをするピストンタイプと違い、水圧を感知する部分がゴムや特殊樹脂などの軟らかいシート(@ダイアフラム)で内部への海水の浸入を防ぎながら同時に水圧を感知し中圧値の手助けをします。
この点がピストンタイプとダイアフラムタイプの一番大きな違いだといえます。
まず、タンクを接続していない状態では、ダイアフラムタイプの1stステージ内部は、外から内部に向かってバネ力を働らかせ(Aメインスプリング)がダイアフラムを押し下げ、そのダイアフラムの内側にある内部の(Bダイアフラムグディスク)を更に押し下げ、(C高圧ホペットが高圧シート)から離れている状態になっています。
そこに高圧のエアーが流れてくると開いている(C高圧シート/高圧ポペット)の隙間より(D中圧ポート)にエアーが流れ込み、今度は内側から外側に向かってダイアフラムを押し返します。
すると(Eサブスプリング)のバネ力も加わり高圧ポペットが高圧シートにくっつく事でエアの流れを止めます。
その状態で中圧ポート内にある圧力が中圧値になるわけです。
メインスプリングが中側に向かってダイアフラムを押し下げるバネ力と内部よりダイアフラムを押し戻すエアー圧力とサブスプリングのバネ力の手助けにより、中圧のバランスが取れた状態がダイバーに呼吸される中圧値となるわけです。
ダイビング中はこのダイアフラムを水中での水圧が直接押し下げる事で中圧ポート内の中圧値が新たな圧縮により高くなり、常に安定した呼吸しやすい中圧値を作り出すことになるのです。

Gタンクバルブ

●スタンダードピストンと●バランスドピストンとの違いは、ピストンの構造が若干違うことで、タンクからのエアーが中圧ポートに流れていく流量と速度が違います。
従ってダイバーがエアーを吸い中圧値が落ち高圧シートからピストンの先端が離れ新たな高圧エアーが流れ中圧ポートにエアーが満たされ中圧値が作り出されるまでの行程速度が遅いと、吸い終りあたりに供給エアーが足りなくなり渋さを感じたり、またダイバー二人が同時に吸ってしまうと途中で供給が追いつかなくなり吸えなくなるというのがスタンダードピストンの構造上の特徴といえます。
一方バランスドピストンタイプは、構造上敏感に中圧の変化に反応し1回で供給されるエアーの流量が多く取れるよう設計されている為エアーの供給不足という問題は発生しずらくなっているのです。
[ピストンタイプ]
イラストはバランスドピストンタイプです。
まずは(@ヨーク)に(Gタンクバルブ)を通し(Aヨークスクリュー)で締め込み固定します。そしてタンクバルブを開いていくとエアーフィルターを通し(B高圧のエアー)が内部に流れ込みます。すると中心部が空洞になっている(Cピストン)の中を高圧が流れて行き区切られた(F中圧ポート)の部屋にエアーが送られ新たに圧縮が始まります。そしてピストンの平たいお尻の部分を押し上げピストンの先端が(D高圧シート)に当たった時点でりエアーの流れ止めます。この押し上げられるピストンをピストンの周りにセットされている(Eスプリング)が逆に押し戻そうと物理的に働きます。従って高圧でピストンを押し上げようとする力と物理的にスプリングのバネ力で押し戻そうとする力関係が中圧を生み中圧値を決定することになるのです。高圧の力はタンク圧ですので充填されたタンクの圧力で常に高圧ですが、スプリングの押し戻そうとするバネ力を変化させる事で任意に中圧値を変えられるというわけです。
調整時に戻そうとする(ピストンの先端が当たることで流れを止めている高圧シートから放そうとする)バネ力を強く調整しすぎれば、当然ピストンの先端が高圧シートから離れて開き、流れがまた始まるので結果フリーフローが始まります。
逆にピストンを押し戻そうとするバネ力を弱めればタンクからの高圧が勝っている為フリーフローは止まる反面、中圧ポート内の圧力は低くなる事になるので2ndステージに送られるエアー圧と流量は低く、結果吸いづらい呼吸抵抗のあるレギュになってしまうのです。
以上が陸上での基本原理です。
しかしこれだけでは水中で水深に応じた適正な密度の濃いエアーは供給されません。
従ってその水深に応じた水中での絶対圧力を中圧値に加えていかなければその圧力差によりダイバーは快適に呼吸することが出来ません。
そこでスプリングの脇のボディに開けられたウォーターポートより水が浸入するようになっていて、その水深で掛かる水圧を取り入れスプリングが戻ろうとするバネ力に水圧が加わり手助けすることで、各水深に応じた適正な中圧が常に一定で確保できるということになるのです。

F減圧された中圧エアー/中圧ポート

Cピストン

減圧されたエアーが2ndステージやインフレーターへと送られる

Eスプリング

D高圧シート

B高圧

@ヨーク

Aヨークスクリュー

イラスト/バランスドピストンタイプ

1stステージにはそれぞれ特徴のある3タイプの種類が存在します。
@ バランスドピストンタイプ
A スタンダートピストンタイブ (CVピストンタイプアンバランス
                   ピストンタイプと呼ばれることもあ
                   りますが全く同じものを指します)
B バランスドダイアフラムタイプ

まず1stステージを解説する前に知っておかなければならないのは「レギュレーター」という単語は「減圧器」という総体的な意味であるということ。
その中で1stステージというのは「一次減圧」といい、要は高圧であるタンク圧を人間が吸える程度までの圧力に落としていく為の過程の「第一ステップ」、それが1stステージです。

【1st Stage の役目と構造】

【ダイバーとしての認識】

例えば、F-1レーサーがなぜあれほど驚異的な速度で更に過酷な条件下で走り続けられるのか? スピードや事故に対して怖くはないのか? なんて考えたことはないですか?
答えはやはり皆な怖いそうです。
しかしそこは驚異的な速度とテクニックでマシンを操るドライバーと、そのマシンを限りなくハイパフォーマンスにそしてドライバーがいつでもどんな時でも安心してドライビングが出来るマシンに常に仕上げているメカニックとの相互信頼関係があるから成し得る技なのです。
ある意味多少なりとも危険性の付きまとうスポーツに携わるのならば確実に安全を確保する努力を自分自身で怠ってはいけません。
レーシングカーが常に最高のパフォーマンスと最高の安全性を確保していられるのは、毎走行後メカニック達がマシンをそしてエンジンをオーバーホールし続けているからなのです。
ダイビングにも同じことが当てはまると思いませんか? 水中という特殊な環境で行われるものだけに安全性を最優先するのならば使用される器材の重要性を決してないがしろにする事は出来ません。
ましてや使用するダイバーが、自分の使う器材の基礎知識もないようでは到底安全性を確保するということは難しくなってくるでしょう。
ダイビングは冒険というものから生まれた水中での楽しみ方のひとつです。
であるから、そこにはある意味「サバイバル」という言葉が隠されていることを自覚しなければなりません。
全てにおいて人任せではご自身の安全は確保できません。
そこでこの特集では、通常皆さんが使用しているダイビング器材について最低限知っていて欲しい基礎知識について解説していきたいと思います。